鉱山ブログ

良質なセリサイトとパイロフィライトの切羽
2021年4月3日 | カテゴリー: 鉱山記事

弊社の敷地の中で一番最初に咲く桜の木です。右の施設は坑排水処理施設で、地下坑道で湧いてくる低pH(3〜4)の坑排水を中和処理する施設です。殺伐とした仕事現場の中でも桜は健気に咲いてくれます。

 

4月に入り、山の桜も満開ですが、明日には雨が降るようで、桜の見頃も今日までのようです。
本日は土曜ですが、弊社は毎週第2、第4の土曜日が休みで、第1、第3、第5の土曜は営業日となっています。ちょっと古くさい営業スタイルですが、よそからの電話もかかってこないので、従業員も有給休暇をとる者が多く、今日は3名がお休みです。

もともと、私自身は東京でサラリーマンをしていたため、この会社が土曜出勤があることにとても抵抗がありました。東京だと、ほとんどの人が土曜お休みですからね。私の場合、出版社で働いていた時期もあるので、土日も割と仕事してましたが。昼から会社に出てきて、夜は池袋で一杯飲んで帰る感じでした。


いつかは完全週休二日制に移行したいですが、なかなか難しいのが現状です。弊社の場合、従業員のほとんどが有給休暇をほぼ100%使い切るため、十分な作業量を確保するのはなかなか大変です。それに安全で健康な操業のために「ノー残業」を掲げており、実際にこの4年ほど全く残業なしでやってます。もう少し効率よく仕事ができるようにしたいです。

 

それはさておき、今日は地下坑内の採掘現場である切羽の話です。

上の写真は、セリサイトの含有利率が高い高品位の石が出ている切羽です。
これが良質なセリサイトかどうか、はっきり言って素人目に区別がつきません。もっと言えば、蝋石採掘のプロでもわからないことが多いです。つまり見た目で良質かどうかはわかりづらいといえます。

 

少し寄ってみた写真です。黒っぽい色をしているは、良質なセリサイトの証です。他にも緑だったり黄色だったり真っ白だったりと、良質なセリサイトの色は様々です。でも色が違っても性質に違いはありません。ちなみに、右にある引っ掻き傷のような線はブレーカでなじった跡です。こんな風に白線ができるのも良質なセリサイトの特徴です。


このレベルのセリサイトには、K2O(カリウム)が4〜6%程度含まれています。良質なセリサイトは、ボーンチャイナと呼ばれる高級食器の原料としてご利用いただいています。ただし、こうした良質なセリサイトはあまり多く採掘できません。年間200トン程度とごくわずかです。こうして良いセリサイトが出た際にしっかり貯めておいて、少しずつ出荷しています。

 

次も良質な原鉱が出ている切羽です。


こちらは良質なパイロフィライトの切羽です。さっきと違いがわからないですか? そりゃそうでしょう。私たちのように日々切羽に向かっている者でも、ぱっと見でわからないことが多いです。


こちらが切羽の踏まえ(足元)に落ちていたパイロフィライトの写真です。Al2O3(アルミナ)が20〜28%近くあります。日本で産出するパイロフィライトで、このレベルのアルミナを含むものはあまり多くありません。かつては、弊社のある備前市三石やそのほかの蝋石採掘地域から、この手のパイロフィライトがたくさん出てましたが、今はもうないかもしれないですね。少なくとも三石地区では弊社しかありません。

この手の良質なパイロフィライトが、なぜかこの数年やたらと出てきます。質の高いパイロフィライトはガラスるつぼや釉薬の原料として出荷しますが、残念ながら出荷量はあまり多くありません。そのため、こうした良質なパイロフィライトが出てきた場合は、低質なものと混ぜ合わせて、蝋石クレーの原料として出荷しています。良質な状態で何らかのニーズがあればよかったのですが、残念ながら特にないのが現状です。

今回紹介した良質なセリサイト、パイロフィライトは、見た目ではわかりづらい蝋石の中でも比較的区別がつきやすいものでした。私たちが普段もっとも多く採掘している品位が中くらいのセリサイトの場合、それこそ見た目で良いものかどうかはまずわかりません。ですので、発破して鉱石が出るたびにX線回折装置と呼ばれる分析機器を使って、石の様子を細かく観察しています。

できれば良質なセリサイトがどんどん出てきてほしいですね。
一方、良質なパイロフィライトは大変脆いため、あまりしょっちゅう出てくると坑内作業の危険度が増してちょっと困りものです。なかなか思ったようにいかないものです。