HOME>坑内採掘から出荷まで 坑内採掘から出荷まで 坑道の総延長距離はおよそ10km 日々伸び続けています 坑内採掘の 進捗速度 弊社は、地下深くに坑道を伸ばして、蝋石などの鉱物を採掘する「坑内採掘」を行っています。地下の最も深いところは、地上から156m下にあり、標高は-30m、瀬戸内海よりも低い場所まで到達しています。坑道の総延長距離はおよそ10km。1ヶ月に掘り進む長さは20~25m、年間で約300m。坑道は日々伸び続けています。 ここでは、弊社・土橋鉱山における蝋石の採掘から出荷までの流れをご説明しましょう。作業は、大きく分けて以下の①から⑩です。 ① 試錐で鉱床調査 ② 削 孔 ③ 火薬の準備・装填 ④ 発 破 ⑤ 坑内から荷揚げ ⑥ 姑息作業 ⑦ 支保工を立てる ⑧ 粉砕・サンプリング ⑨ 各種試験の実施 ⑩ 出 荷 ①試錐で鉱床調査 鉱床の付帯状況の把握 ボーリングによる 調査 坑道を延ばすにあたり、まずはボーリング調査を行います。鉱床の賦存状況を知り、今後の採掘計画を考える上でも重要な作業です。 ボーリング調査の様子 ビットと呼ばれる歯先をつけた鋼管を回転させて、硬い岩盤に細い孔を開けて掘削していきます。その際、掘削した孔の部分を抜き取っていきます。これをボーリングコアと呼びます。抜き取ったボーリングコアは、X線回折を行い、岩質や品位を確認します。ボーリングコアは、鉱床を知るための重要な資料となるので、大切に保管します。 抜き出されたボーリングコア X線回折の実施 X線回折の結果は表にまとめていきます。何メートル付近でどんな品位の蝋石が出てきたかを容易に確認できるようにします。ちなみに、一回のボーリングで調査する長さは概ね50mとしています。ただし、岩質の変化によってボーリングが継続できない場合もあります。 ボーリング調査の結果をまとめた表 ②削孔 切羽に20~50箇所の孔を開ける ジャンボーによる 削孔 ボーリング調査の結果を受けて、採掘が決まった切羽は、発破の準備を進めていきます。使用する重機は「ジャンボークローラードリル」、私たちは「ジャンボー」と呼んでいます。 ジャンボードリル ジャンボーでは、爆薬を装填するための細長い孔を開けていきます。1箇所の切羽に対して、削孔する孔の数は20~50箇所。穴の数や方向、長さ、穴と穴との間隔は、坑道の大きさや岩質などを考慮して行います。 削孔の様子 坑道は半円形のアーチ型に掘り進んでいきますが、爆薬を充填する孔もアーチを描くように開けていきます。1度の発破で発生する鉱石の量や発破によって延ばす距離、周囲の安全などを総合的に判断し、適切な削孔を行うのがベテランの技となります。 ジャンボーでの削孔作業は大きな騒音が発生します。もちろん、地下深くの坑内ですから外部に騒音が響く心配はありませんが、作業員は近くにいますので、耳栓をして作業にあたります。 ③火薬の準備・装填 孔に火薬を装填する 含水爆薬と アンホ爆薬 削孔した孔に火薬を装填していきます。装填作業にミスがあると、火薬の点火に失敗したり、不発の火薬が発生するなど、大きな危険があります。したがって慎重に作業を進めていきます。 使用する火薬は「含水爆薬」と呼ばれる紙の筒に包まれた粘土状の爆薬と、「アンホ(ANFO)爆薬」と呼ばれる粉末状の爆薬で、爆薬の点火には電気雷管を利用します。アンホ爆薬は、専用の器具を使って圧縮空気で孔に充填していきます。なお、発破にはかつてダイナマイトが使われてましたが、扱いが難しく危険なため、現在では利用されていません。 含水爆薬 アンホ爆薬 ④発破 雷管を結線して点火装置で発破する 危険を伴う作業 安全の確保を最優先 爆薬の装填が終わり、すべての雷管を結線したら、周囲の安全確認を行い、発破の態勢に入ります。安全確認と作業員への通達が終わったら、雷管の結線を点火装置につないで、合図を出してから点火して発破します。この時、大きな爆発音とともに衝撃波が来るので、作業員は発破箇所から遠く離れ、耳栓をして待機します。 雷管を結線 点火装置で発破 発破が終わった後は、有害なガスが発生し、粉塵も舞い上がっているため、ガスと粉塵が収まるまで切羽には近づきません。場合によっては、会社の終業直前に発破を行い、一晩放置して、翌朝から作業を続行します。これを鉱山用語で「上がり発破」といいます。 発破後の切羽 ⑤坑内から荷揚げ 鉱石をダンプトラックで 地下から地上へ 坑内専用の特殊な タイヤショベルも 使用 発破によって発生した鉱石は、ダンプトラックに積んで坑外へと運び出し、貯鉱ピットに保管します。かつては線路の上を走る鉱車、つまりトロッコに積み込み、バッテリーカーで牽引して積み出しを行っていましたが、現在では土木工事などで使われる一般的な大型タイヤショベルやダンプトラックを使っています。また坑道の狭いところでは、写真の様な背が低くて車幅が狭い坑内専用の特殊なタイヤショベル(川崎重工製「M7」)を使用しています。 積み込みの様子 特殊なタイヤショベルM7 ちなみに坑内は、年間を通して温度がほぼ17度で一定しています。一方、湿度は70%と湿気の高い環境です。加えて、湧水や粘土質の鉱石の影響で足元が悪いため、重機、機械類のメンテナンスに十分配慮する必要があります。 貯鉱ピットに保管 ⑥姑息作業 「姑息」とは浮石を除去する鉱山用語 姑息作業 発破後の切羽 発破によって鉱石を取り払った直後の切羽は、発破の衝撃で破壊されているため、切羽表面の鉱石が剥がれ落ちたり、天井の鉱石が落ちてくる危険があります。こうした「浮石(うきいし)」を除去するために、油圧ブレーカを使って切羽の浮石を叩いて落としていきます。この作業を「姑息(こそく)」と呼びます。字面だけみるとなぜ「姑息」と呼ぶのかわかりづらいですが、どうやら「こそぐ」「こそぎ落とす」という言葉が語源のようです。 ⑦支保工を立てる 熟練の技術を要する支保工の作業 坑道の柱となる 支保工 切羽の安全が確保できたら、今度は坑道の柱となる鋼枠を立てていきます。このアーチ状の鋼枠のことを「支保工」といいます。支保工には坑道の天井を覆うためのデッキプレート(鉄板)を溶接していきます。なお、デッキプレートでは強度的に不十分な場合は、鋼矢板と呼ばれる分厚い鉄板を使います。各種鋼材の運搬や溶接は、熟練の技術を要するところです。 支保工 溶接作業 支保工を組んで安全が確保できたら、電灯や機械装置を使うための電線を延ばします。また、削岩にはエア(圧縮空気)と水が必要なので、それぞれの配管も行います。奥に行くと、空気が悪くなってくるので、空気を送り込むための送風機と風管も設置します。 このように、自分たちの作業環境一式を徐々に延ばしていって、奥へ奥へと掘り進むのが坑内採掘なのです。 ⑧粉砕・サンプリング 原鉱を10mm以下のサイズに粉砕 複数の原鉱を ブレンド 坑外に積み出した鉱石は、切羽ごとに原鉱ピットに保管されます。弊社で生産される鉱石は、ユーザー様の工場で微粉砕されて最終製品となりますが、弊社では微粉砕を行っておりません。弊社ではトラックに積みやすいように、鉱石を10mmサイズの小石以下まで粉砕して出荷します。 原鉱ピット 粉砕場の様子 鉱石は10mmアンダー品へ また出荷時には、たいていの場合、いくつかの切羽から採掘された鉱石をブレンドして出荷しています。1つの切羽だけでは品位やクセが偏る場合があるので、いくつかの切羽をブレンドして、ユーザー様から提示された仕様になるよう調整するのです。 弊社の粉砕場は、1日にだいたい200トンの粉砕ができます。粉砕場では不揃いの原鉱が、一次クラッシャー、二次クラッシャー、振動ブルイなどを通っていくことで、10mm以下の小石や粉になっていきます。 サンプラー この時、サンプラーでサンプル採取を行います。サンプラーは、粉砕場に設置してあります。粉砕したものがピット内に落ちる直前に、小さなスプーンですくい取る形で採取します。スプーンは数分に1度といった具合に、自動的に作動します。 ⑨各種試験の実施・配合 品質の確保と安定に欠かせない 各種試験 X線解析や 成分分析を実施 サンプラーで採取したサンプルは、自社内の各種試験を行い品位を確かめます。また成分分析は専門の業者にサンプルを送って分析してもらいます。試験項目は、製品によっては十数種類に及ぶ場合もあります。弊社で特に重要なのは、陶磁器を作るうえで必要とされる成分の量や粘性、色の白さなどです。 X線回折装置 ⑩出荷 国内だけでなくアジア各地へ出荷 複数のピットで 各品種を管理 自社内の試験やユーザー様の試験で合格したら、製品にロット番号が付けられて、ロットごとに出荷ピットに保管されます。その後、ユーザー様からの注文に応じて、出荷ピットから製品が出荷されていきます。鉱山からトラックで直接工場に出荷される場合もあれば、いったん港まで運ばれて、そこから船に載せて出荷される場合もあります。 出荷ピット 輸出用のフレコンパック ダンプへの積み込み出荷 最近では、アジア各地の陶磁器メーカーにも出荷しています。その場合、フレコンバックに1トンずつ詰め込み、トラックで港まで運ばれます。港では、フレコンバックをコンテナの中に詰めた後、他の荷物と一緒に大型の貨物船で海外へと出荷されていきます。